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「里山の生態系の構造と動態および管理方法の研究」
鈴木 伸一(研究員)

アイコン研究の目的
はじめに
 里山は、「人間生活に不可欠な燃料、あるいは農業生産に必要な落葉や腐植のような有機肥料を得るために、自然林の破壊によって人為的に形成され、維持管理されてきた人里周辺の林地」と定義される(重松,1998)。
 一般的に、雑木林とよばれている薪炭林・農用林が里山である。具体的には低地のコナラ林・クヌギ林・アベマキ林・アカマツ林、山地のミズナラ林などの二次林とよばれる林を指している。
 これらの里山は、燃料用の薪や柴の採取、炭焼き、肥料とするための落 ち葉掻きや刈敷用の若枝・低木の採取、山菜・キノコ採りなど日常生活の必需品を得るために、定期的な下草刈り・伐採などの人為的管理によって今日まで維持されてきた。
 このような半自然的な生態系である里山は、近年環境問題に対する意識の高揚にともない身近な自然として注目されてきている。
 里山は高い生物多様性を維持してきたと同時に、自然林に準ずる水源涵養、洪水調節、水質浄化などの環境調節・保全機能を備えている。また、農村の生活基 盤を支えてきた文化的存在でもある。近年ではこれら各種の機能面・生物的特性が注目され、身近にある優れた自然として高く再評価されてきている。
 しかし一方、エネルギー革命による薪炭林の需要の低下と農業後継者の急減により、管理が粗放あるいは放棄される里山が多くなり、里山の林相は近年急激に 変化してきている。また、宅地開発・造成など急速に進行する都市化により、里山そのものが各地で失われてきており、里山の存続は危機的状況を迎えつつあるのが現状である。
 このような現状を踏まえ、里山の生物相や植生、景観に関する基礎的な研究は、種多様性の保護や都市近郊の環境保全・復元対策のための重要な緊急課題である。
アイコン目的
雑木林などの広葉樹を中心とする二次林環境である里山についての生態学的評価を目標とし、生物多様性や循環型管理など現在注目されている里山の特性を含めた二次林としての里山の分布、構造、種類などを植生生態学的手法を用いて明らかにする。里山地域として、耕作地、植林、集落など里山周辺も含めた植生景観域を研究対象とする。
アイコン 研究項目
  1. 里山の変質化についての国内の広範調査による実態の把握
  2. 里山林の植生調査に基いた類型化およびそれらの群落型と立地・分布域・管理特性などとの対応関係の把握  
  • 二次林である里山林と自然林との比較によるそれらの相違性と類似性の解明および里山の起源についての考察
  • 日本の里山と極めて類似した中国東部の夏緑広葉樹林との比較と、それらナラ林型里山の成立過程および生態的特性の解明
アイコン研究成果
  1. 九州,中国地方および北関東における里山林の常緑広葉樹林への変質状況の実態調査
  2. 関東地方の里山林の分布特性について(印刷公表)
  3. 中心的な里山であるコナラ林の植生類型化(印刷公表)
  4. 山地帯の里山であるミズナラ林の植生類型化(印刷公表)
  5. アカマツ林の植生類型化(公表準備中)
  6. 中国華東地区におけるナラ林およびマツ林の類型化とそれらの日本との比較(印刷中)
  7. 中国華東地区における里山林再生地のモニタリング調査
  8. 里山に関する環境学習の実施普及(横浜市立緑園西小学校)
  9. 里山地域の水源管理に関する植生および環境調査(群馬県大峰沼)
  10. 利根川源流域におけるミズナラ林,ブナ林などの自然林調査(印刷中)
  11. 箱根地区における広葉樹林再生植栽地の植生動態モニタリング調査
「薪炭林として維持されてきた里山(クヌギ−コナラ群集):川崎市麻生区」
「薪炭林として維持されてきた里山(クヌギ−コナラ群集):川崎市麻生区」

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